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子浦日和山ツアーをご紹介!前編
2024.05.03

伊豆半島は、海底火山と地殻変動によって何万年もかけて誕生した奇跡の半島で、地質学的に貴重な地形が多数存在します。ユネスコ世界ジオパークという国際的に価値のある、地質遺産の保護と持続的活用を目的とした事業対象にも認定されています。

南伊豆町内では石廊崎やユウスゲ公園、弓ヶ浜などのジオサイト(地球の活動がわかる場所)が有名ですが、JU-ZAの所在地「子浦」やその周辺地域にも、穴場名スポットが多数存在します。

今回は南伊豆ジオガイド会の推奨ルート「子浦日和山ツアー」を、ガイドの関本さんと一緒に巡ります。所要時間約2時間、難易度中と紹介されているこのコース。日和山からの絶景や、三十三観音といった史跡、オプションの子浦街散策まで、フルフルで楽しみます!


集合場所の「落居口」へ

関本さんとの待ち合わせ場所、子浦と落居の分岐点「落居口」へ向かいます。JU-ZAからは徒歩で15分ほどですが、階段→坂道とひたすら上りが続きます。

子浦は細い路地と階段がとても魅力的な集落で、映画「いなくなれ群青」のロケ地にもなりました。作中で“階段島“として登場しますが、不思議で少し物悲しいストーリーにピッタリで、ここで撮影したいと思った監督さんの気持ちがとてもよくわかります。

ですが、なんせ階段島。町内の移動に上り下りは当たり前。情緒もいいけどいきなりハード!笑

息切れしつつゆっくりマイペースに上っていく中、振り返ればすでに素晴らしい景色が広がります。日常にはない子浦ならではの体験として、ここはぜひみなさまにも楽しんでもらいたい!

坂道を上り切ったところが、集合場所の「落居口」。ここでは以前「峠の茶屋」として、子浦の干物屋さんが干物の販売など行っていました。現在お店は閉まっていますが、ベンチや自動販売機があるので、バイカーやサイクリストが休憩している姿もたまに見かけます。

今回ガイドを務めてくださる関本さんは、南伊豆町出身で、定年退職された後町へ戻り、現在は様々な団体に関わられているそう。南伊豆ジオガイドの会の理事長も務めていらっしゃいます。

JU-ZAからは木村、真鍋、いっきーが参加。2024年5月開催のイベント「Photo Story Telling in Minamiizu」のロケハンも兼ねているため、気合い十分で臨みます。

Photo Story Telling in Minamiizuの詳細はこちら

ガイド料(オプション付き)4,000円/1名をお支払いし、保険適用のためのサインと、軽いストレッチをした後、いざ日和山へ突入!峠の茶屋横の細い道から山中へ入ります。

鬱蒼とした道には往時の残骸が

道を進むとすぐに突き当たり、右へ行くと落居、左へ行くと子浦への分岐となります。ただ落居方面の道は崩落し、現在は通行止めに。通称マーガレットラインと言われる国道136号線が通るまでは、この道が集落間を陸路で行き来する主要な道だったそう。小学生もこの道を通って子浦の三浜小学校まで通っていたとか。道や交通手段が発展するまでは、陸路より海路の方が圧倒的に便利だったことにも頷けます。

道は通る人もほぼなく、木々が鬱蒼と生い茂ります。ふかふかに積もった落ち葉の上を歩きながら、まだ少し残る山桜や椿を眺め進むと、少し開けた場所から「伊浜」という集落の絶壁が見えてきます。

伊浜の絶壁の一部が白く見えるのは「火山灰」が主成分となっていること、きらきら光って見える石にはガラスの成分が含まれていることなど、丁寧な解説をお聞きすると、土や石・岩・地形の状態を読み解くことが、伊豆半島の成り立ちを解明していく手がかりになるのだなと感じます。目にみえる景色全てに理由があることを知ると、「絶景」というひと言では終わらない、より深い興味が俄然湧いてきました。

またそうしてできた土地で、人々がどのように暮らしてきたか、その痕跡も道々に残ります。

日和山(ひよりやま)は、実は日本各地にある山の名前で、船乗りが船を出すか否かを決める際に日和を見る(天候を予測する)ために利用されていました。必然的に港町に多く、南伊豆町内だけでも4つの日和山が存在します。

ここ子浦の日和山には、天候を予測するための「方角石」が残っていました。柱のような石の上面に、十二支で表わした方位が刻まれたもので、次の港までの数日を見込んで天候を見なければならなかった当時、この場所は大変重要な拠点であったことが窺えます。現在文字は風化してほぼ読めない状態。周りもすっかり木々で覆われ、ここから海は望めませんが、そんな状態がかえって時の流れを感じさせます。

ここ子浦の日和山では「御影屋」という屋号の日和見が有能だったそう。御影屋を調べると、木綿の大型帆布の開発者「御影屋松右衛門」という人物にいきあたり、江戸時代や明治の初め頃この御影屋の廻船問屋を受け入れる船宿が子浦にあって、「御影屋」を屋号としたのかな〜?と、後から調べて妄想したり。妄想で色々な仮説を立てるのも、歴史面白いところ。

この方角石のそばや道沿いには、かつて畑や果樹園だった跡があり、水を溜めておくための風呂釜や作業小屋、ビニールハウスなどが放置されています。南伊豆町の高齢化や過疎化は急速に進んでおり、空き家や耕作放棄地も目立ちますが、持ち主にとっては先祖代々の土地や家屋であり、手放すには抵抗感があるもの。

高齢化や過疎化が進む南伊豆町に於いて、地域活性の一助になればとオープンしたJU-ZAですが、自然に朽ちていこうとするこのような光景を見る度、「良いこと」を断定してはいけないと身の引き締まる思いがします。

日本一深い駿河湾を一望する日和山頂上!

入り口から歩くこと20分で、日和山の頂上に到着!眼前には駿河湾が広がり、いきなり開ける視界に開放感もマックス!程よく汗をかいた体に、4月のまだ少し冷たい風が心地よく吹き抜けます。

駿河湾は、伊豆半島最南端の石廊崎と御前崎を結ぶ線を湾口とした、日本一の深い湾。伊豆半島はフィリピン海プレートの上にあり、はるか南から移動してきて日本列島に衝突したわけですが、駿河湾はこのフィリピン海プレートと、ユーラシアプレートの境に位置しているため、プレートの境が海底峡谷となり、2,500メートルもの深さを誇る深海湾となったわけです。

この日は風のない晴れで、ガイドの関本さんも珍しいというほどの好天。JU-ZAから落居口までは上りとなりますが、遊歩道入り口からここ山頂まではほぼほぼ平坦。ここまできて遊歩道へ引き返すのもおすすめです。

しばらく写真撮影を楽しんだ後、今度は子浦へ向かって山の中の道を進みます。
ここからが急斜面もあり滑りやすく、慎重にいかないと危ない場所が何箇所か続きます。また伊豆半島の熊は絶滅したとされていましたが、2023年10月に河津町でオスの成獣のツキノワグマが捕獲されました。ここ日和山遊歩道でも真偽は不明ですが、熊の足跡らしきものが発見され、注意喚起がなされています。

他にもこの辺りには猪、鹿、猿などの野生動物や、マダニやマムシなども生息しています。山に入る際は動きやすく肌の露出が少ない服装、歩きやすい靴など、ご自身でしっかり安全対策を行なってくださいね。


続きは後編でご紹介いたします。蛇くだり伝説や子浦・妻良の名前の由来、南伊豆町の木「ウバメガシ」についてなど、案内ガイドが盛りだくさんです。ぜひお楽しみに。

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〒415-0532 静岡県賀茂郡南伊豆町子浦1669

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