JU-ZAのオリジナルコーヒーを作るという試み。
それはJU-ZAで出している朝食のスープレシピの開発・監修をしてくださっている東京観光専門学校カフェサービス学科、その生徒である戸田風花さんから「JU-ZAのオリジナルブレンドを作らせてもらえないか」とお話をいただいたことからスタートしました。
戸田さんは授乳中のお母さん向けのカフェインレスコーヒーを企画して好評を得たご経験があり、JU-ZAとしてもオリジナルコーヒー企画には以前より興味があったため、是非に!と二つ返事でご依頼。
監修は日本橋・水天宮にある「CAFFE CALMO(カフェカルモ)」さん。オーナーの関口さんは大手コーヒーショップで商品開発に携わったのち、2011年にCAFFE CALMOをオープン。現在は東京観光専門学校で講師もされている、コーヒー豆焙煎のスペシャリストです。
若い感性とプロフェッショナルの技、二つの心強い力を得て、オリジナルコーヒー作りがスタートしました。
実はサイクリストとコーヒーは切っても切り離せない関係があります。
ロードバイク、サイクリング、ランニング、スイムなどのアクティビティを記録するアプリ「STRAVA」のビックデータを解析した「 Year in report 2018」を見てみると、サイクリストはランニングをする人に比べてコーヒーを飲む人が圧倒的に多いことがわかります。
その理由のひとつとして考えられるのは、イタリア文化の影響。ビアンキ、コルナゴ、デローザといった有名自転車ブランドの多いイタリアは、自転車愛好者人口が非常に多い国。三大ツールのひとつである「ジロ・デ・イタリア」も開催される自転車大国です。
国中にサイクリングルート(自転車道)が整備されており、多くのサイクリストたちが自転車の旅を楽しんでいます。そんなイタリアでは朝、食後、休憩にと1日に何杯もコーヒーを飲む習慣があります。サイクリングルートを走りながらパブでコーヒーを飲んで休憩する、そんなイタリアの文化が広まって行ったのではないか、という説があります。
また、イタリアの有名なコーヒーの関連会社がロードレーサーのスポンサーになってきたが影響しているという見方もあります。
ツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアを5回ずつ制覇した伝説的なロードレース選手のエディ・メルクスを2年に渡りスポンサーを務めたのはイタリア・ミラノのエスプレッソマシンメーカー「FAEMA(ファエマ)」でした。また、エスプレッソマシンメーカーのSaeco(サエコ)が2004年までロードレースチームのスポンサーを務めていたことを記憶している方もいるかもしれません。
現在では、日本にも上陸しているイタリアのコーヒーブランド「セガフレード」もチーム「トレック・セガフレード」のスポンサーを務めています。
そういった歴史が自転車とコーヒーを自然と結びつけてきたのではないかとも考えられます。
もう一つの理由として挙げられるのが、コーヒーを飲むことで実際に得られる効果です。
コーヒーに含まれるカフェインには以下のような効果があると言われています。
・運動のパフォーマンスの向上(心肺機能が強化されることによる)
・疲労感の軽減
・注意力・集中力の向上
カフェインは摂取してからおよそ30分で吸収され、その効果を発揮し、数時間持続します。サイクリングの前、そして休憩時間にコーヒーを飲むことはサイクリングに良い影響を及ぼしているといえるでしょう。
また最近ではサイクリングしながら気に入った場所でコーヒーを淹れて飲む“コーヒーライド”が人気になっています。自転車で走りたどり着いた先にある美しい景色と、体を癒すコーヒーの香りと味。きっと格別なことだろうと想像できます。
以上のようにサイクリストとコーヒーの結びつきについてはさまざまな説がありますが、理由はともかくコーヒーを愛するサイクリストが多いのは事実。JU-ZAでも美味しいコーヒーでサイクリストの皆様をおもてなししたいという気持ちで、オリジナルコーヒーの開発に取り組みました。
2022年11月、JU-ZAメンバーが東京観光学校にうかがって、出来上がったオリジナルコーヒーの試飲が行われました。風花さんがコーヒーミルで豆を挽くと、コーヒーのいい香りが漂います。
試飲一口目で、豊かな香りと共にフレッシュな酸味が広がります。伊豆の海の爽やかさをイメージしたテイストとのことで、なるほど確かに飲んだ後の爽快感が素晴らしい!
ブレンド違いで何杯か試飲し、より印象に残ったものをチョイスした後は焙煎の検討を行いました。
このときの焙煎は「浅煎り」。コーヒー豆はその焙煎の仕方によって味わいが変わります。一般的に浅煎りは酸味を残したフレッシュな風味、深煎りはよく焙煎することで豆の苦味、コクがでて、どっしりとした味わいになります。最近ではブルーボトルコーヒーに代表される浅煎りのコーヒーがトレンドだそうなのですが、JU-ZAメンバーは深いコクのある味わいが好み。そこで浅煎りと深煎りの2種類を作っていただくことにしました。
浅煎りと深煎り、それぞれの特徴はこちら。
●浅煎りタイプ 柑橘系フルーツのような爽やかな酸味の味わい。伊豆の海の爽快感をイメージした、香り高く後味のすっきりとしたコーヒー
●深煎りタイプ ビターチョコレートの苦みと甘みが特徴。伊豆の深い森のように濃厚で、最後まで香りが持続する味わい深さがあるコーヒー
使用している豆はエチオピア・イルガチョフW・ケニアAA・コロンビアなど希少種を使用。どれも単体でも特徴がある豆ばかりで、それらをブレンドして絶妙な味わいを作り出しているのは非常に珍しいとのこと。もしお店でこのコーヒーを頼んだらワンコインではとても足りない、そんな贅沢なコーヒーになっています。
こうして出来上がったコーヒーが“KAZEMACHI BLEND”という名前になったのには、JU-ZAのある南伊豆・子浦の歴史が関係しています。
古くから海上交通の要所である南伊豆。江戸時代に下田に船番所が設けられて以降、妻良・子浦の港は海路の宿場町として賑わいました。伊豆半島を迂回するとき、波の穏やかな子浦湾は船を停泊させるのに最適な場所。「風待ち湊(みなと)」として有名でした。嵐が収まるのを待つのもそうですが、当時の日本型帆船は風の力だけで航海するため、向かう方向に適した風が吹くまで待つことが多かったようです。その逗留期間は、長い時には3ヶ月ほどになることもあったといいます。1864年(文久4年)1月2日に、長州征伐のために大阪へ行った帰りの14代将軍徳川家茂公も、嵐が収まるまで子浦で風待ちをしたという記録があります。
当時はそのように風待ちのために逗留する客を相手にする遊郭も数多くありました。その遊女たちが地蔵を転がすと罰が当たり、海が荒れることから、風待ちで訪れた船客を引きとめるために転がしたという“ころばし地蔵“が今も日和山遊歩道の先にあり、当時の様子を伝えています。
そんな子浦の歴史を感じてほしいという思いと、企画者の戸田風花さんのお名前の“風”にちなんで、KAZEMACHI BLENDと名付けました。
JU-ZAはご宿泊だけでなく、施設利用料550円にて休憩のみのご利用も可能。ウエルカムコーヒーとして通常ネスプレッソカプセルを1杯無料でご用意しておりますが、ご希望いただければご自身で豆から挽いて淹れる体験型ウエルカムコーヒーとして、KAZEMACHI BLENDをご提供いたします。
コーヒー器具は、洗練されたデザインと機能性でコーヒー好きの方に人気の珈琲考具さんのものを利用。軽くて丈夫なドリッパーは、コーヒーライドを楽しむ方にも愛用者が多く、アウトドア感も感じられます。
淹れ方によって味が変化すると言われるコーヒー。今この瞬間、自分だけの味わいのKAZEMACHI BLENDを是非お楽しみください。
参考文献:
・カフェインの効能について
東京福祉大学 短期大学部 栗原久『日常生活の中におけるカフェイン摂取 -作用機序と安全性評価-』
・風待ち湊について
青野壽郎『地 理』 第一巻 第二号「伊豆半島に於ける風待港に就いて- 伊豆半島に於ける漁村の地理學的研究 第三報」